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読書レポート?その4

今回はレポートというより、ただの感想です。

メタボラ Book メタボラ

著者:桐野 夏生
販売元:朝日新聞社
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600ページにわたる厚さや内容の重さながら、一気に読める面白さもあった。
(詳しいことを書くのは読む楽しみを奪いますので、内容には触れませんが・・・)

沖縄を舞台に、記憶喪失のギンジと、家出してきた宮古島出身のアキンツ(ジェイク)の2人の視点から、沖縄基地、ニート、ワーキングプア、DV、家族崩壊、バックパッカー、ホスト、ゲイ・・・と次々に現代社会の特徴的な事象や問題(特に若者に関する)が描き出されています。
そこは、「希望」や「夢」といった言葉がまったく存在しない世界です。
主人公と同年齢の私は、明日はわが身かもしれないと思うと、今の現実のあまりのつらさを感じ、気持ちが悪くもなりました。 

野坂昭如が毎日新聞で連載している「七転び八起き」で、戦後の混乱期を生きてきた野坂の体験から見た、今のネットカフェ難民についてこんなことを書いていました。

「戦後ぼくは、食うものは勿論着るものも寝る場所もなく、ようやく手に入れたテカテカの学生服を看板に、ウロウロしていた。朝起きると今日食えるもの、今夜どこで寝るかをひたすら考えていた。だがまわりもすべて同じようなもの。日本全体が貧しかったのだ。今、昔と違うのは、ネットカフェ難民から上へはなかなか這い上がれる世の中ではないということ。」                                     (08年3月10日朝刊) 

最後の「上へはなかなか這い上がれる世の中ではない」という指摘は、メタボラで描かれていたものと同じです。

現代社会は底なし沼みたいなものでしょうか?
一度はまったら、いくらもがいたところで、後はゆっくりと沈んでいくだけです。 
ただ、タイトルの「メタボラ」(ギリシャ語、metabole、変化)とあるように、記憶喪失の主人公が「磯村ギンジ」と偶然付けられた新しい名前を頼りに、なんとか必死に生きていこうとする姿を描くことで、この現代社会は、新陳代謝(metabolism)していけるのだ、しなければいけない、という気持ちを桐野はこの本にこめたのかもしれません。

ま、一度読んでみてはいかがでしょうか?

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