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読書レポート?その4

富田英典、藤村正之編『みんなぼっちの世界―若者たちの東京・神戸90s・展開編』(恒星社厚生閣、1999

<要約>

学生コンパで場を盛り上げるためだけにイッキ飲みをしたり、カラオケボックスで誰かが歌っているのにも関わらず相手を見ず他の事をしているなど、現在の若者を取り巻く状況を粒さに見ると、それまでの考えでは捉え切れない状況がある。本書は、95年に東京・神戸で行ったアンケート調査(1629歳まで)を元に、90年代の若者(団塊ジュニア、19721981生まれ)の行動や意識の一端を明らかにしている。

若者各々が勝手に行動するが、みんなでいることは崩さなく、常に「みんな」という演出を欲しがる。個人主義とも集団主義とも言えない曖昧な雰囲気に満ちた世界があった。本書では、G.ジンメルの「ふたりの孤独」(恋人、夫婦が陥る孤独)という概念を用いて、若者が濃密なコミュニケーションなどという「うざったい」ものを避けつつ、一方で集団としてまとまろうとする関係を「みんなぼっち」と名づけた。「みんなぼっち」の世界では、外部との境界線に意味があり、そこでの範域にのみコミュニケーション回路を限定し、内部空間(友人などの集団)は、親しさと希薄さがともに漂う非常に狭いものであった。これは、宮台真司が言う「島宇宙」(極少人数で同質な関係による集団)に近い。

そして、「みんなぼっち」の世界では「他者」という存在が無いというのも特徴的である。核家族化している現代、若い世代の人間関係が希薄になっているのが現状である。家族(親、兄弟)、友人以外の関係(近隣の人、叔父、叔母)、つまり地域共同体というものが崩壊し、一般的な規範や道徳を学ぶための重要なモデルである「他者」の存在が弱体化している。そういった中で、距離感を保つ人間関係によって、他者理解に伴う問題を回避している。この狭い人間関係しか持たない特徴は、G.H.ミードの、具体的な周囲の他者(親、兄弟、友人・・・)を真似することで自我を形成する「プレイ段階」に当てはまり、見知らぬ他者と共有されたルールの元に自我形成する「ゲーム段階」(「プレイ段階」の後に発生する段階)には至っていない。

結果として、「みんなぼっち」の世界にある自我(自己意識)は確固としたものではなく、「自分探し」をしたり、一方で一貫した自己などなくその場で振舞うすべての姿が「自分」であると考えたりする若者が出てきている。そんな危うい自己のイメージを防御、傷つかないための戦略が、「みんなぼっち」である。そんな世界の中で、現代の若者はお互いにコミュニケーション回路を自由に開け閉めし、他者と一定の距離を取ろうとしている。

<参考文献>

ジンメル、清水幾太郎訳『日々の断想・愛の断想』(岩波文庫、1979

宮田真司『制服少女たちの選択』(講談社、1994

ミード『 精神・自我・社会』(人間の科学社 , 1995

ここからは、この本を読んでの感想、勝手な私の見解です。

この調査が行われてから、2年後の97年。 「酒鬼薔薇事件」が起き、その時から急激に「少年犯罪」というものが新聞、テレビでクローズアップされ、「キレる10代」なんて形容詞が若者(中・高校生あたり)に付与され始めた記憶があります。

酒鬼薔薇と同年代の私は当時中学生(15歳)であり、少なからずこの事件によって世間から若者(中、高校生)に対してマイナス、危険なイメージ(否定)が付与されたような気がします。

そういった中で、私を含め当時の若者が世間に対して卑屈な態度、あきらめをどこかで抱いてしまったのかもしれない。(少なくとも私は当時そんな印象を受けました。)

一方、先述の「みんなぼっち」の若者(95年時点)では、他者とのコミュニケーションの煩わしさを回避するのが目的であり、そこには社会に対してのあきらめとかそういった感情は無いように思われます。

「みんなぼっち」以降、若者の取り巻く環境の転換点を迎え、それに伴って若者の社会に対する意識もどこか不安、あきらめ、孤独を帯びたものになっていったのかもしれません。

それでは、さらに10年経った現在の若者はどうなのか?

それは、本書の続編である岩田考他編『若者たちのコミュニケーションサバイバル―親密さのゆくえ』(2006)を読んでからまたアップしたいと思います。(なるべく早めに!!)

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