« 今日の出来事。 | トップページ | 今日の夕食(6月7日~15日) »

読書レポート??その2

フィスクでは無いです。

今回は、綿矢りさ『夢を与える』(河出書房新社、2007)です。

夢を与える Book 夢を与える

著者:綿矢 りさ
販売元:河出書房新社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 

阿部夕子(父親がフランス人と日本人のハーフ)なる少女が、持ち前のスタイル・ルックスの良さからチャイルドモデルを始め、そしてひょんなことから企業のCMモデルとして抜擢される。そして、そのCMがきっかけとなり、大手事務所にスカウトされ、芸能界へとデビューしていく。

この小説は、芸能界という特異な世界をテーマに、ある少女がその中で成長し、悩み、苦しんでいく状況を描いている。

(といっても、あくまで少女の人生、心情に重きは置かれていますが。)

ただ、夕子は、人前に出たいと強く思ったり、上手に笑顔を作れるような世渡り上手な性格の持ち主では無い辺りが、芸能界と一般社会とのズレが見えやすくなっている。

 

と、詳しい内容を書くと、後で読む人の楽しみを奪ってしまうので、

面白い表現だけ紹介。「 」は、文章中の表現。

 

(あるパーティーでの席で、業界のお偉方への挨拶周りをした際・・・)

「小さなパーティーバックは名刺をつめこみすぎて夕子が歩くたびに一枚一枚床に落ち、誰かのハイヒールが知らずに踏みつけている。」P132

また、

「最近もてはやされてきた男性タレントが、ディレクターや休憩している共演者に次々に話しかけながら歩きまわっていた。さらさらの長髪の乱れをしきりに気にしつつ(中略)スタジオ中を歩き回る。人脈を作りたいんだろう。」p161

この男性タレントは、その後、夕子にも話しをかけている。夕子は、そんな男性タレントの妙な笑顔に対し、この世界に必死に生き残ろうとする不安の表れを感じる。

 

(あるドラマの宣伝インタビューの際に・・・)

「インタビュアの質問に元気よく答えるたびに、嘘は言っていないけれど過剰に気持ちを飾るくせがついた。飾れば飾るほど、自然体だと評価された。」p133

自分の本心と、答える言葉のギャップに苦しむのですが、常に「楽しい、うれしい」などのポジティブな言葉を吐き続けなければいけないのは常人の精神では絶えられないでしょう。

 

男性アイドル(ジャニーズ?)に対して、

「彼らは人見知りもせず自然体、仕事に″取り組む″のではなく、″こなして″いて、最初から肩の力が抜けていた。」p159

ま~、さぞかし会社での教育が行き届いているんでしょうね。(小さい頃から所属して、いろんなことを叩き込まれるんだしね)

 

憧れの人気女優に対して、

「顔はとても人工的で、スタッフに囲まれ、他の共演者でさえ寄りつけなかった。顔の表情は厳しいのと締まっているのとぎりぎりの間くらいで、想像よりもよっぽど真面目な表情をしていた。」p159

往年のスター女優(杉村春子あたり?)を指すような表現。

もしや、松嶋菜々子あたりがそういう感じなのかな。よく分かんないけど。

A  

 

  

   

 

と、長々と書きましたが、普通の少女が芸能界という世界の中で、苦悩するあたりはうまく表現されていると思います。

(ま~、そういった「テレビの中の私」(創り上げられるイメージ)と「実際の私」の乖離なんてものは、元アイドル達が暴露しまくっているので、別に衝撃を受けるわけではないですが。)

最後に、この小説のタイトルにもなっている「夢を与える」。

文章中では、限られた人(人気のある芸能人など)のみが人々に夢を与えることができると書いていますが・・・

では、どんな「夢」を与えるのか?(単なる夢というよりは、役割として)

女性アイドルについて考えてみると・・・

 

①憧れとしての夢 (同年代くらい、女性。テレビなどを通して、こういう人になりたいと思う)

②性的対象としての夢 (男性。グラビアアイドルなんてまさにそれ。)

③商品としての夢 (芸能事務所など。人気が出ることで、テレビや映画での出演が増えたり、CDやグッズが売れ、お金もがっぽり。事務所としては収益が上がる。)

④名誉としての夢 (本人、もしくは親。アイドルの頂点を極めたいと思う。)

 

もっとあるとは思いますが、基本的にこんなものかな。

こんな一見すると、相反し矛盾する夢をつなぎ合わせて成立しているあたりが、

J・フィスクが『テレビジョンカルチャー』で言うところの、「多声性テクスト」「相互テクスト性」であるかも。つまり、視聴者、受け手の立場、状況によって、ある事象、人物に様々な読みがなされる。結果的に、ある1人の「アイドル」が、様々なファンに対して、同時にアピールすることになる。

その点で、アイドルとテレビは切っても切れない密接な関係にあるだろう。

と、強引にフィスクと引っ掛けてみました。

|

« 今日の出来事。 | トップページ | 今日の夕食(6月7日~15日) »

「書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/304838/6728418

この記事へのトラックバック一覧です: 読書レポート??その2:

» 定数 [武装闘争継続]
どんぐり ナラティワ 定数 [続きを読む]

受信: 2007年6月14日 (木) 01時11分

« 今日の出来事。 | トップページ | 今日の夕食(6月7日~15日) »